オレンジアイスが口の中で溶けていく感覚が気持ち悪い。人工的な柑橘の味がドロリとしている。
「沖田、このアイス不味い」
「そんなわけないだろい。ちょっと貸せ」
アイスが沖田の口のなかに入っていく。表情はいつものまま変わらない。
「おいしい?」
「それなりになぁ」
「それなりってどれなり?」
「は?」
沖田が握っているアイスがだんだんと溶けて沖田の革靴に染みを作っていく。そのまま放置でもしたら蟻でもたかるだろうか。
「靴、舐めやすか」
「馬鹿言わないでよ。舐めるわけがない」
「そのアイスで汚れたべとべとの口も綺麗になって一石二鳥でさあ」
「だぶるで汚れるぞお」
アイスはまだ沖田に握られたまま溶け続けていく。もう食べないのかな。
「アイスいりやすか」
「さっき不味いって言ったじゃん」
「じゃあ、俺いりやすか」
「きっとそれも不味いよ」
でもきっと君は一個五千八百円ぐらいするマンゴーと同じくらいの価値は私にはあると思うよ。
「接吻ならしてあげる」
ペチカ
今から夏は始まります