High Time

□過程
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そんなわけで私は今、顔を上げたくないのだ。遠ざかる足音が聞こえるから店員も諦めたらしい。一時間くらい寝たら、帰ろう。電車もきっと動いてる。

そんな事を考えていたところで、妙な音がした。さっきの足音がまた近付いてきて、私が突っ伏しているテーブルに何かをおいた音。それから椅子を引いて、恐らく私の前に、座っている。

おかしい。朝飯を取りながら私にプレッシャーをかけつつ追い出す算段なのか。おかしい、おかしすぎるぞ、店員。

さすがに、これは気まずいと思って私は起き上がった。マックの次は、どこに行こう。

「あ、ああ!」

「起きたか」

起き上がってみれば、目の前には店員ではなく、クラブで空手チョップをお見舞いされたイケメンパツキンがいた。

「なななんで、いるんですか」

「いや、あの、詫びようと」

「詫びって、空手チョップを?」

「あ、あぁ…それだ。あん時は仕方なかった」

「仕方なかったんだ…」

「頭、なんかおかしくなってたりしてねえか?」

「おかしくはなってないけど、凄く疲れちゃって」

「本当に悪いことした…謝る」

イケメンパツキンは深々と頭を下げてくれた。何だか私が申し訳なくなってしまうから、そんなに頭を下げないでほしいな。

「てか、あんたさ、家に帰んねえのか?」

「電車なくて」

「…すまねえ」

「もうもう謝らないでいいから!元々どっか適当に泊まる予定だったし」

イケメンパツキンは怪力に反して、優しい人だった。世の中のイケメンはみんなどこかに一つ欠点があるのだな、と学ぶ。

一息ついて、頭をがしがしかいた。疲れた時の、私の治らない癖。イケメンパツキンはそんな私を、じっとり見つめている。何となく恥ずかしくてテーブルに肘をついて、首を傾げた。

「な、なあんですか?」

私がそう言うやいなやイケメンパツキンも肘をついて、ぐっと私に近寄って、こう言った。

「俺ん家、来るか?」

「…いく」



お持ち帰りされるまでの過程




@続くかもしれない運転

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