二歩、三歩と歩みを進めれば彼女は僕についてくるだろうか。「そうだといい」なんて馬鹿な事は考えないようにする。
鼻から入って喉を通る風は冷たいのに対して、僕の体の端という端は、ぬくい。
「今年も終わりですよ。厄除けしないとなあ」
「貴方の厄は早々落ちたりしないですよ」
「あーあ、何も聞こえない」
横目で彼女を見る。いつもと変わらず彼女は炬燵に入って、大口で蜜柑を頬張っている。本当に年が変わるのだろうかと思う。変わらないのは僕たちだけじゃないのか。いや、僕だけか。
「河合君、蜜柑の皮の汁で書いた紙を炙ると文字が浮き出てくるんだよ」
「あなたも、大概変わりませんよ」
「はあ?」
変わるとか変わらないとか、どうでも良くなってきた。とにかく、今は接吻がしたい。
「早くその口の中にある蜜柑を吐き出せ」
「はあ?」
何も望まないよ