「知らない、知らない知らない。あなたなんか知らない」
「何言ってるんですか」
強く掴まれた手首を振り解いて私は気づいた。こんな人会ったこともないし喋った事もないのに。何一つだって知らないよ。血が頭に上っていく音が聞こえる。縁側の外は秋の風が吹き荒れている。至極寒い。
「寒い」
「は?」
「もう寝ます。帰ってください」
「待って」
彼の手は生ぬるい。この生ぬるさを私は知っている。
「一緒に帰りましょう」
知っている。いやだ知らない。
「ど、どこに」
「家に」
「―――うん」
しまった
「もう泣かないで」
「うん、おかえり」
「ただいま」
風が止んだ。
あなたなんて知らない
*わけわかんねえ