「トムさん、少し聞きたいことが」
「どした?」
一息吸って煙を吐くと公園のカラスが逃げていった。その光景を不思議に思いながら、隣で黙々とハンバーガーを食べ続けるトムさんに質問をなげかけた。
「ツツモタセってなんすか」
「何だよいきなり。誰の入れ知恵だあ?」
「いや、この間耳にして気になったんで」
「美人局ってのは、あれだよ、男が女使って金騙し取るんだよ」
「…どうやって?」
最後の一口をコーヒーで流し込んでから、話を続けた。
「例えばよ、どっかの冴えないサラリーをターゲットに女が捕まえて、色々しちゃった後に突然その女の男を名乗る奴が現れんだよ」
「はあ」
「それで、俺の女に手を出したってイチャモンつけて金ふんだくんだよ」
「…世の中分からないっす」
「で、何か静雄に関係あったりすんのか」
もう一度、煙を吸いこんで頭をかいた。関係はないのだが、気になることがあった。
「…知ってる奴が、それかもしんなくて」
「へえ。ま、美人局絡みの女はバックが厄介な奴ばかりだ。関わらないに越したことはないな」
「そっすか。すんません色々」
「それは別にいいけどよ、静雄。また、お前やってる」
「は?」
膝に二つ目の火傷に穴。