「静雄君、寝てるの?」
出かけ先から静雄君の家に帰ると、彼は窓際で沈んだように眠っていた。眠っているというより、倒れ込んでいるようなその格好に違和感を覚えていた。近づいてみると、どうやら眠ってはいないようで、眉間に深く皺を寄せている。
「大丈夫?」
「わかんねえ、けど」
「なに?」
「壁がくっ付いて離れねえ…壁になりそうなんだよ」
もしや静雄君、完璧にキメちゃってる?でもどこで?静雄君自らそんなものやるはずないし。こういう時の対処法を私は知らない。
「ほらちょっと横になろ」
「無理」
ぺちぺち頬を叩いてもあまり効果はないみたいで、とりあえずまだバーテン服のままだった彼を着替えさせることにした。もうすでに外れていたネクタイは放り投げて、シャツのボタンに手をかけた。すると、吐かれたため息が悩ましげなものだから、思わずキスしてしまった。
「おい」
「ん?」
「もっとしろ」
「でも、」
「いいからしろよ」
それからしばらく後、正常な意識を取り戻した静雄君に話を聞けば、取り立て先でたくさんの葉っぱが黒々と燃えていたらしい。当然、静雄君はそれが何だか分かっていなかった。
「バカだね」
「うっせ」
しゃんとして下さい