「マックって手広いね、今度はチキンだ」
がつがつ鶏肉を頬張る中、静雄君はシェイクを静かに飲み込んでいた。期間限定のヨーグルト味。私も少し飲みたくなって静雄君がストローから離れたところを狙って奪い取ってみると、中身はもう空だった。
「もうない」
「買ってこいよ」
「お金ない」
「奢ってやるよ、そんぐらい」
わざわざ買いに行くのは面倒臭かった。飲めない悔しさをストローにあてる。前歯でかじって噛み千切るのが私の癖だ。
「お前、人が口付けたもんをそんなに噛じるのやめろって」
「いらいらすんだもん」
「別にいいけどよ。それより早く食え。煙草吸いてえから」
最後の皮をほおりこんで、水で流して完食。ごちそうさまでした。
「行くぞ」
「どこに?」
「俺んち」
「ノミ野郎が現れない内に」と言って、私に向けられた手が大きくて胸がはねた。