めいん1

□雨上がり
2ページ/4ページ



いつも、ひとりだった。

いつもこころは、ぽっかりと穴が空いていて。

それを埋める方法なんてわからなかった。


傍にたくさんの誰かがいても、

たくさんの幸せがソコにあっても。

オレはいつもひとりぼっちで。

オレだけがミンナと違ってた。


皆が笑い合う飲み会でも、

アスマがやっと彼女ができたってお祝いした日も、

やっと希望の勤務につけるって喜んでた同僚の前だって。


カオでは笑ってる、つもりだったけど、いつだって心の中では。

哀しかった、辛かった。



こどもの頃はオトナがなんとかしてくれるってそう思ってた。

でも母さんが死んで、父さんがいなくなって。

大好きで大切な人たちが、どんどんいなくなる。

いつしか、オレは早くオトナにならなくちゃいけなくて、ずっと前を見て無我夢中だった。


気が付いたら、オレの後ろには何もなかった。

真っ黒い闇だ。

夢の中ですらソレが追いかけてくる。

一人で眠るのには慣れたけど、オトナになるにつれ、怖くて堪らなかった。



どうやったらコレは埋まるんだろう。

いつも笑って、笑顔を張り付かせて誤魔化してきたけど。

誰にも聞けないまま、こんなになってしまった。


ある日、待機所でぼーっとしてたらいつの間にかアキノが近寄ってきてた。

オレはアキノがスキだった。

その気持ちに気が付いたのは、気になっていつも目で追ってたらアスマが教えてくれたから。

お前は本当にアキノが好きだよなあって。


そうなんだ、この気持ち、スキってやつなんだ?

気が付いてしまったら、もうダメだった。

どこにいてもアキノのコトが気になって気になって。

笑ったカオ、怒ったカオ、拗ねてそれからちょっと呆れてそしてクシャっと笑う。

全部ぜんぶ、ぜんぶ。

その仕草も、人を貫くみたいなまっすぐな瞳も。


スキですきで、苦しくて堪らない。


隣になんの躊躇いもなく座って、今日あったこと、明日ある予定のコト、こないだ紅と飲みに行った時のコト、今度部下を持つんだってコト。

表情をコロコロ変えて、楽しそうに、笑う。

無邪気に。

アキノに愛される人は、シアワセだろうナ。

そんなことが頭をよぎって、虚しくなって考えるのをやめた。

この笑顔を、この小さな肩を、抱きしめて独り占めできるヤツを思って、ふいに切なくなる。


それはきっと、オレじゃない。


急に彼女の顔が見れなくなって、正面に向き直したら、さっきまで絶え間なくしゃべっていたアキノが静かになった。

どうしたんだろ、と目線をやると、彼女の表情が、ぐにゃ、と歪んだ。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ