ぶん

□記憶を辿れば君が〈3〉
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突然、アスマの口から飛び出したニナの名に、ピクリと上目蓋が反応した。けれど悟られまいと表情を変えずに答える。

「ま、顔見知り程度だケド。」

ツラッと言ってはみたが、その先の言葉を浮かべてウンザリ。溜息を押し殺して前に向き直った。

「察しのいいお前なら何が言いてぇのかわかるだろ。飲みん時、その子紹介してくれよ、な?俺等に。」





  ・
オレら?

 ・
…らってダレ?







一部に疑問を感じてアスマの方にぐいんと顔を向けた。
すると煙草銜えてニヤリと笑うアスマの向こう側で、コッチをじーーぃっと見ている男達が十数人。



(ウゲ…何コイツラ…。)



冷や汗がツゥとこめかみを走り抜ける。
ニコニコと視線を向けてくるソイツらを尻目にアスマがパシン!とカカシの前で手を合わせた。


「な!頼む!」

イヤ、拝まれても。






なんという展開。


後ろのヤツラも、お願いしますはたけ上忍!と哀願しているではないか。
ニナってこんなに人気あるの?てか、情報早すぎジャナイ?暇人、こいつら絶対ヒマジンだ!

毎晩ストーカーしている男に言われたくないだろーが、兎に角。

じょーだんじゃナイ。

なんでオレが大事なニナをこんなヤツラにホイホイと差し出さなきゃいけないワケ?
そう考えて、なんとか諦めてもらおうとカカシも重い口を開く。


「あのネ、唯の顔見知りなんだッテバ。それなのにナンデそんなコト…。」


幾らニナの幸せを願うにしろ、守りたいという気持ちは変わらナイ。ましてやこんな下心ミエミエなコイツらとニナを仲良くさせたくなんかナイってもんだ。

しかしそんなカカシの心情とは裏腹に、アスマは再びニヤリと笑った。


「もうネタは上がってんだっての。俺が聞いた話、かなり親しげだったそうじゃねぇか。」


自信満々でそう言うと、アスマはオレの肩にどん、と腕を乗せてきた。重い。

どうやら受付でのニナとの最初のやり取りを誰かが見聞きしていたらしい。あの時のニナの表情から言っても、親しみが込められていたのは明らかだっただろう。

うっとカカシが言葉に詰まるとアスマはこれ見よがしに更に腕に体重を掛け、詰め寄ってきた。


「それともなんだ?お前もしかしてあの子のこと…好きなのか?惚れてんのかぁ?」

からかうように笑うアスマ。カカシはかっとなって顔を背けてしまった。

まさか毎晩ストーカーまがいなことをしているなんて誰にも言えナイ。


「…別に。わかったーヨ、しつこくされんのイヤだから、しょーかいしてあげる。」


その一言を待ってました、と言わんばかりの
やったーーーーーー!
という叫びが一斉に上がった。


クソ、なんでオレがそんなこと…。


カカシは自分の不甲斐なさに内心、落ち込む。
悔し紛れにアスマに向かって、紅は?と聞くと

「今日は欠席。」

と親指を立てて向けられた。


イヤ、何その気合…いらんケド。




溢れる溜息を今度は思い切り吐き出した。

たまたま通りかかった人らが、なぜか沸き立つ待機所の男共を見て訝しげに視線を送った。


その中心でゲンナリと肩を落とすカカシがいることに、誰も気づいていなかった。





(サイアク…。)
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