めいん1

□夜を駆ける
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見てしまった

見てしまった。


見るつもりなど毛頭なかったのに。



―夜を駆ける―






夜半前、帰って誰もいなくなったアカデミーの教室で。

オレは受付けの帰りに、今夜は飲んで帰ろうかとか考えて。

アカデミーを突っ切って行けば一番の近道。オレは知ってる。近道はオレの専売特許。
ま、アキノに近道とか言ってめんどくさいだけでしょ!とかいつも怒られるんだけどネー、

とかにやけていたら、通り掛かった教室から聞こえる男女の声。

誰だろこんな遅くに。

聞くつもりなんかなかったのに。
フラフラと近づいてしまったのは、聞こえてきた片方が、さっきまで頭の中で聞いてたアキノの声そのものだったカラ。

ほんの少し開いた扉の隙間、明かりが廊下にもぼんやり漏れていて。

その隙間から片方だけ晒してる目で覗き込めば。

見えてきた教室、赤い顔したアキノと、驚く表情してる受付けのナルト馬鹿な爽やか先生。

――息が、止まった。



真っ赤なカオ、下に向けて気持ちを告げたキミ。

――ごくり、と静かに喉を動かすオレ。

その数秒後、黒髪の彼は頭を掻きながらたった3文字 、困った笑顔で呟いた。

――ごめん。


ズキリと胸が軋んだ音。
これはオレ?それともキミかい。

ああそれでもう十分だ、頼むからもう言わないでやってくれ。

アキノは顔を上げずにろくに相手の顔も見ないでかすれた笑みを浮かべると

一言、二言、そして最後に

『はっきり言ってくれてありがとう。』

そう言ってこちらに向かって駆けてきた。
オレはその場を素早く離れる。瞬間、見えたキミの顔は―‥




あーあ、ああ。
フラレちゃったネ、キミも、オレも。
オレはよく知ってるから、そんなんじゃ諦めきれないってわかってるヨ。

だって本当に本当に、スキなんでショ?知らなかったけど、アキノの趣味ってあんな優男ナーンダ。知ってたらオレ、なんか違ったのカナ。

とりあえず、あんな悲しみに歪んだカオ、見たことナイもの、ネ。
あんな赤い顔、オレの前じゃしないものネ。

そしてオレはそんなアキノが好きで好きで。
スキでたまんない。

いつも隣で、ひた隠してきたオレのヒミツ。

こればっかりは近道なんかないから、オレは無駄に遠回りしてアキノの周りをぐるぐる、回る。

スキ、たまにキライ、
けどやっぱ好き。
欲しくなる。
けど、手を伸ばせない。

オレが実は臆病なヤツだって、知ってた?
アキノ。





オレは素知らぬ顔して、
アキノの家 先回りした。
キミはネ、すぐに帰ってくるんだこんな日は。

任務とかで失敗したり、誰かとケンカしたりした日はね。




その度にオレは酒に付き合わされる。

嫌な顔しながら内心、それが毎回楽しみだった。

愚痴は前半ですぐに終わって、次第にアキノはオレの世話焼きに入る。

その言葉ひとつひとつ、
必死に頭に焼き付ける。

酔ったキミの流暢に動く唇

宙を忙しく舞う手の平

酒のおかげでほんのり赤く染まった頬

その全てを、目にも焼き付けて。

酔っ払ったアキノを送り届ける間、肩に寄り掛かる柔らかな重み

首筋から香る、キミのにおい、仄かに甘くて

その全てが、オレの物ならいいのに。

そんな夢想、胸に抱いて。


知られたらきっと、嫌われてしまう。こんな欲塗れなオレの本心。

キミは綺麗だから。
心が、形づくる全てが。

だからひかれてしまうんだ




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