めいん1

□雨宿り
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人通りの少ない裏道。

うす曇の空から一転、突然振り出した雨に、適当な軒下を見つけて駆け寄った。

さっきまでなんともなかったのに。

憂鬱な色の空を見上げて、少し塗れた髪を手で撫でる。

沢山の雨音が自分の周りを囲んで、

ココだけがポツンと取り残されたようなそんな空間。

耳元にシトシトと残る音色がやけに寂しくて、震えてきそうな指先を手首までポケットに隠した。


早く、やまないかナァ


ぼんやりと、ただ目の前の落ちてくる雨粒を見つめて立ち尽くす。

そんな昼下がりの午後。





―――――雨宿り








ぼーっとしてるとパシャパシャと足音が近付いてきた。

あ、オレだけじゃなかった。

突然の雨に困ってたのは。

たぶんココに来るだろうと少しだけ右に寄って、一人分の空間を空ける。

雨粒の滝の中、駆け込んできたのは小柄なくの一。

そのベストの色から同じ上忍だとすぐわかった。

そして、それがアキノだってコトも、すぐに。

一瞬、息を止めて、それからすぐにまた真正面を見続ける作業に戻った。


ハアハア、と小さく乱れた呼吸を整えた彼女が、軒下に入り込んでハッと息を飲んだのが気配でわかる。

チラとだけ目線を送って、目が合ったけどスグに逸らした。

オレの動揺が伝わらないように。


彼女はパタパタと肩や髪を濡らしたしずくを落として、それからオレと同じ方を倣って見つめた。

肩が、近い。



アキノとこんなに近くで過ごすのは、いつ振りだろ。

前はいつも一緒に、あんなに傍にいたのに。


あんなに、抱きしめ合ったのに。


もうその温もりも忘れてしまった。

さっき目が合った時の、彼女の瞳を思い出す。

あの頃と変わらずキレイで、まっすぐで、オレのとは全然違う。

そんなアキノが、ずっとずっとスキだった。

ホントは、今も、ずっと。




突然別れを切り出したのは、アキノだった。



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