めいん1

□桜雨
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桜舞い散るあの季節に

思い出すのはいつも

あなたの事

あなたの事ばかり








―――桜雨













好きな人がいる。

この年になって恋に落ちるなんて

胸ときめくなんて

笑われるだろうか。



たまにすれ違う廊下

受付けに来るほんのひととき

この一瞬が永遠になれと

いつも願う 祈る。

偶然でもちらと目が合えば

思わず自分から逸らすくせに

もう一度見たら

あなたがこっちを見てるんじゃないかって

淡い期待を込めてしまう。

そんな事は一度だってないくせに。

何度も願ってしまう。何度も、何度も。



あなたは俺の名前すら知らないのに。


辛い、苦しい、寂しい。片思いなんてするもんじゃない。

でもすれ違えば嬉しい、目が合えば幸せ、切ないけど、そんな日は少し、楽しい。



ケド、本当は

受付け以外でも話して、みたい。声をかけて見たい。

笑った顔を見てみたい、笑ってほしい。
社交辞令のそれじゃなく。
誰かにじゃなくて、俺に、俺のためだけに。



仲良くなりたい

でも俺にそんな勇気ない。






週末の受付け業務

次第にだれてくる午後の暖かさ。

こんな日はみんな早く帰りたがる。

俺だって例外じゃない。仕事なんて本当は面倒くさいし。


外面だけはいい調子な俺。
本当は腹の中にいろいろなものを抱えてる。

誰だってそうだろ?俺だってそうだ。


でもそんな面倒くさい仕事だって
あなたが来れば
あなたがいてくれるだけで


「あー、アキノだ。今から?」
『あっ、こんにちはー。や、報告だけ。』

(アキノさんだ)

隣の受付けのテーブルにアキノさんが来た。
くそ、今日は俺んとこじゃないのが少し悔しい。

いや、凄く。


「ふあーあ。ほんと眠くなるよネ、この時期。」
『ふふ、そうだね。あったかいもんね。』

大きなあくびをしてるのは本当にけだるそうな目元を片方だけ晒してる上忍はたけカカシ。
うらやましい、うらやましい。そんな会話すら俺はできないのだから。

その傍らでうんと頷く彼女の笑顔。
その横顔をちらりと盗み見る俺。

同じ部屋にいるのに

こんなにも遠い、遠く感じる。



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