うらみち

□リンドウ
1ページ/1ページ





あなたの泣き顔が見たい


あなたを困らせて困らせて


私だけしか見えなくして


私だけのモノに








――








薄暗い部屋にひっそりと響く水音


すすり泣く、押し殺した声




「どうして、こんなこと、」


まだしゃべる気力あったんだ

この先の楽しみを思い浮かべて口元が緩む



「するん、ですか」


目の前のナミダを浮かべた黒髪の男を見下ろす

両手を後ろに縛られて、身動きが出来ずにいる


『イルカのこと、好きだから』


驚いたような怯えたような、大きく眼を見開く姿を見て私は満足する


手に持ったクナイを彼の体に押し付けると

さっき付けた傷から、数滴の血がつうと滴る


「やめ、」


何時間こうしてるだろう

はじめのうちは激しく抵抗していた彼も、もうその力もないようだ

そうだよね、薬もまだ効いてるはずだもの


『イルカが悪いんだよ、逃げようとするから』


そっと反対の手で彼の黒髪を撫でようとした

ビクリとその体が震える

思わず喉を鳴らした

彼の瞳の奥に恐怖の色が浮かんで

諦めたように消えた


あなたの傷付く顔がすき

私のせいで傷付く、あなたがだいすき





『イルカ、ずっとずっと傍にいてね』



そっと塗れた頬を両手で包み込んで、優しく唇を重ねる

足元で無機質な音をたててクナイが転がった


なんで、泣くの?

あなたが言ったのに

ずっと、傍にって






ずっと、いっしょだよ




次第に深くなる口付けに荒い息を漏らしながら

受け入れたかのように

イルカがそっと笑った気がした










END.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ