ぶん
□記憶を辿れば君が〈4〉
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絶 対 無 理 !!!!
―記憶を辿れば君が―
暗い夜道を、二人足並み揃えて歩く。
てくてく、とまるで重なり合う音に苦笑い。
こんなにいとしい音色を、オレはどうしようもないくらいの情けなさで逃していたなんて。
左手にニナの、オレより小さな手の感触。柔らかで暖かくて。その感触に、熱にドキドキした。
右手をポケットにつっこんで、もじもじと指を動かしているのはナイショ。ゆっくりと歩くニナのペースに合わせて、肩を並べた隣。
ウレシイ。
「ご、ごめん、ネ。ニナを泣かせるつもりじゃあなかったんだよ。」
言い訳を口に出してみても、ただかっこ悪くて言って後悔。ニナは何も語らずに黙ったまま、オレの隣をチョットだけ遅れて歩いてる。
まだ、泣いてる?ごめんネ、ホントにごめん、と繰り返す。と、突然きゅ、と手を握り返された。
その優しい力加減は、まるであの頃のようで。
だいじょうぶだよと、夢の中で言ったあの子。
記憶の中の風景と重なった。
驚いてニナの方を見る。その目はオレを見て、その顔は嬉しそうに微笑んでいた。
な、ナンダ、泣いてなかったの?
慌てた自分が恥ずかしくて、耳にカーっ、と熱が灯る。
夜の闇に隠せ隠せ。
『ニナって、呼んでくれた。』
いつもの他人行儀な言葉を身につけないで、ニナのありのままのそれがオレの感情を包み込む。自然にほころぶ表情に、ドキリと心臓が跳ね上がった。
「べ、別に、いつも呼んでたデショ?」
あの頃は。そして今は、こっそりとダケド。
声が震えるのは夜風のせいだと思ってくれてる?
それとも、もう何もかもお見通しなのかい。
オレのこの気持ちも想いも全部。
『最初、顔合わせたときだけで、さっき言ってくれるまではずーっといっつもサン付けだったよ。』
まるで勝ち誇るような顔で笑ってる。酔ってるの?それとも、心を開いてくれてる?あの頃みたいに。
後者だと、いいのにナ。
「ニナだって、オレのことはたけ上忍って。他人行儀だったじゃナイの。」
みっともなく反論してみる、ホントは気にしてたのに
1度も言えなかったことが今夜はスルリと喉から零れた。
手と手が繋がってる安心感からか。
ニナの隣にいる喜びからか。
きっと、そのどちらもだ。
『だって、カカシは上司なんだもの。それに受付とかではそうしてないと…嫌かなって思って。』
急にシュン、としょげてる。ああ。ニナはあの頃と少しも変わってない。落ち込んだ時のクセとか、肯定してる時は静かに手前に首を傾けるとか。
そんな些細な事が嬉しい。
『お酒入ると緩みそうになって、さっきは凄く無理してたんだけどね。』
と今度はおどけて見せた。
ナルホド、だからさっき違和感あったんだ。
そんなこと、いいのに。と俺は囁いた。
静かに響く、二人の足音、ポツリと交わす言葉。少しずつ、オレとニナの間にあった距離が埋まってきてるそんな気がする。
ほんの、少しずつ。
ゆっくりと。
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