ぶん

□記憶を辿れば君が〈2〉
1ページ/5ページ


何がしたいんだ、オレは。






―記憶を辿れば君が―








「ったく。カカシせんせの遅刻グセ、いい加減にしてほしいってばよー!?」


ナルトが歩きながらぶう垂れた。

昨日の任務もお気に召さなかったらしいナルトが朝からご機嫌斜め。

オレはいつもの本を取り出してハイハイすみませんネ、と空返事をする。

全然反省の色がねぇ!とナルトが暴れるのをサクラがうるさいと止めた。
後ろでサスケは興味なさそうについてくる。ケド、何か小さな声で呟いた、そのせいでまたナルトががなる。

あーあ、叩かれた。

オレは苦笑いでページを捲った。
受け付けまでの廊下を騒がしくさせながら、歩く。


受付け所内はほとんど人がいなかった。もう大分朝のラッシュは過ぎた時間。

ナルトがいい依頼はないかも、と嘆いている。
あのネ、早いもの勝ちってわけじゃナイのヨ…。


ナルトをたしなめながら、受付けをソロリと視界に入れる。
気付けばニナの姿を探している自分に内心、苦笑してしまう。

中へ進むとナルトが受付けに座っていたらしいイルカ先生に声を掛けた。
挨拶されて返す。と、隣にニナが座っていた。

あ、

「あ、昨日のねーちゃん。」

ナルトが指を差すと、イルカ先生がこら!!と慌てて怒った。

「この人は新しい受付担当で、特別上忍のニナさんだぞ。」

ね、ねーちゃんとか言うなよ。

こほん、と咳払いをするその頬がほんのりと赤いのは、きっと気のせいじゃない。
なぜか胸が痛む。

『フフ、昨日の元気な子だね。よろしくね。』

ニナが笑う。
それだけでこの場の空気が澄んだ気がする。
見つめていると、ばち、目が合ってオレは思わず視線をはずしてしまった。

今のはわざとらしかったか?

適当に7班の自己紹介を済ませて任務書を受け取ると、挨拶もそこそこにオレはその場を去る。

後ろでナルトたちが、イルカ先生とニナにじゃあ、と声を掛けてるのが聞こえた。


部屋を足早に退出しながら、ナルト達が不思議そうにしている気配がするけど、オレは自分でもよくわからなかった。


イルカ先生とニナの声が耳に届いてきて、またチクリと胸が痛む。

何がしたいんだ、オレは。

避けたってしょうがないのに。



オレは臆病者だ。





(あの頃と変わらずに。)
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ