めいん2
□涙は冷えて
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『ごめんなさい』
深く、頭を下げた彼女の姿を、うまく、見れない
謝られたってことは、つまりはそういう事だ
「そです、か」
なんて言ったのか覚えてない。
一言、ふたこと、なんとか口にしてオレの表情筋は笑顔を作り出した。
申し訳なさそうに走り去る彼女の後姿を、いつまでも眺めてた。見えなくなっても。
ずっと。
―3ヶ月前
彼女と知り合ったのは任務先。
山賊が時々山から下りてきては悪さをして行くからと、痺れを切らした里の長が頼んだらしい。
その村の村長は、3代目と懇意にしていたらしくその伝手で木の葉隠れの里に任務が回ってきた。
その里の警護を任されて、赴いた場所で。宿泊先の宿、隣にある食堂で働いていた看板娘。
お茶を出されて口につけた瞬間。
目の前の女性がオレの頭に手を伸ばしてきた。
思わず、固まってしまった。敵意なんかないってわかってた、でもいやに無防備に、無遠慮に手を伸ばされたから。
固まって、その動きを目で追った。
『はっぱ、ついてましたよ』
なんだか面白い事見つけた子どもみたいに笑ったその顔が、かわいくて、かわいくて。
お礼を言うのも忘れて、その手の葉っぱ越しに彼女を見つめた。
同じテーブルについてた仲間が、おいと声を掛けるまで、気付かなかった。
彼女の手を掴んでいるって。
なんかうるさいナと思ったのは、お盆が落ちた音だった。
それからずっと、その食堂に通って。
任務が終わってからも、その後のフォローの為にと理由をつけて。
自分の仕事が終わった後の、密かな楽しみ。
彼女の名前を知って、好きな食べ物とか、好きな物とか、どんな事でも知りたかった。
彼女を形作る全て、何もかも。
周りからはカカシにしては珍しい、そう言われた。オレが豆に通ってる姿がおかしいらしい。
「アキノさんは、この村がお好きなんですネ」
今日も仕事終りに寄ったら、ちょうど食堂の戸締りをしたアキノさんが出てきて。オレは尻尾を振った犬みたいに、彼女に駆け寄って家まで送ることを提案した。
その途中、質問したらアキノさんはいつもの朗らかな笑顔でこっちを振り向き話し出す。
『はい!生まれ育った村ですから』
父と母もここで出会って、私を生んだそうです。そう続けてどこか遠い目をした。
彼女の両親は戦に巻き込まれて亡くなったらしい。身寄りのない幼い彼女を、村全員で守ってきたそうだ。と、食堂のオッサンが言っていた。
もし、オレが告白したらどう思うだろう。
そしていつか木の葉の里に来て欲しいと言ったら。
あまりにも先のコトを考えすぎていて、自分でもおかしくて笑ってしまう。でも自分はそういう性分だ。叩いた橋をこれでもかと踏みつけて崩れはしないかと確かめる。
臆病なモンだ。
『カカシさんも、この村を気に入ってもらえたら嬉しいです』
「ハイ」
もうスキです、だいすきです。アキノさんが。言えたら、いいのに。簡単に。
でも危険な任務も多い自分の生き方を考えたら、ソウ簡単には口に出せない。
木の葉隠れの里に生まれて育った人達とは違って、彼女は普通の人なのだから。
ここは小さくて平和な村なのだから。
『いつも送って頂いて本当にありがとうございます』
「イエ、山賊の輩はもう退治しましたケド、その後の安全もフォローするのが我々の・・・」
そこまで言うと、彼女はくすくすと笑い出した。薄く染まった頬の桃色が、白い肌に映えてキレイだ。
「アノ・・・」
『あ、すみません。カカシさんは優しい方ですね』
イヤ、別に・・・と誤魔化すように頭を掻く。自分の下心がばれてしまってるんじゃナイかと内心焦った。
笑顔で挨拶して扉を閉める、アキノさんを最後まで見送る。
この時間がたまらなく寂しい。
帰り道は、いつも彼女を想って胸が熱くなる。
暗い自分の部屋に帰宅すると、彼女もこんな寂しい気持ちで部屋に入るのカナと少し、慰められていた。
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