めいん2

□ビネツの行方
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―ビネツの行方






ゼエゼエと息が荒い。

頭がぼーっとする。

体中が熱い、汗かいちゃったから着替えたい・・・でも体がだるくて動かない。


どうやらたちの悪い風邪にかかったらしい。





(困ったなぁ、今日任務あるのに・・・)


目が覚めて一番初めに思ったのが任務の心配。

だって今日の任務はカカシと一緒。

不謹慎ではあるけど、久しぶりにカカシとの合同任務にドキドキしてたのに。

なのに・・・ついてないなあ。


視界が歪む中、天井をぼんやりと眺めていたらいきなりカカシの顔が現れた。


『・・・?』

「ヨ、元気・・・じゃーナイよね」


え、ちょっとなに?なんでカカシが???

夢?じゃない、てか、はあ???

パニックに陥りつつ、熱のせいで反応も出来ない私を見て、カカシが少し笑った。


「今日任務一緒でしょ?オレやさしーから迎えにきてあげたんだケド、ピンポン鳴らしても出ないからサ」


寝てるベッドの傍でどさり、と物音がした。
どうやら、カカシが買ってきた物らしい。


『だ、だからって勝手に・・・』

「あーあー、いいから。アキノは寝てて。ホラ、これ口に入れて」


起き上がろうとしたら問答無用で体を抑えられる。そして口に体温計を突っ込まれた。

正直色々考えるところはあるけど、今はそれどころじゃない。ぼんやりとする頭ではすっぴん見られて恥ずかしいとか寝巻き姿が・・とか気にはなったけど、ここは甘えさせてもらおうかな・・・。

大人しくなった私を見下ろして、カカシは満足そうににっこり笑った。


「あ、受付けにはオレが言っておいたから。アキノとオレ、今日休むって」


あ、ありはと、って言おうとしてちょっと待てよ状態。
私はともかくなんでカカシまで・・・。


「だって、アキノの看病しないと」


しないと、ってそんな満面の笑みで言われてもね。文句を言おうにも体温計を突っ込まれててしゃべれない。というか熱のせいかしゃべる気力もあまりない。


「熱はー・・・うわ、こりゃ高い、だめだめ今日は大人しく寝てなサイね!全部オレに任せて」


見ようとしたら体温計はすでにカカシが奪って思いっきり振ってしまっていた。どんだけ古い体温計なの。それそんな機能だったっけ?

疑問に思いつつ、正直ありがたいなと思ってしまった。だって私熱なんかあんまり出したことないし、こんなに辛いものだとは・・・。


カカシは大人しく横になった私を見て、嬉しそうに買い物袋を手にしてキッチンへと向かった。何がそんなに楽しいんだか。

カカシって面倒見いいところあるんだな。
ちょっと、惚れ直した。


「おかゆ作るから。あと食べたら着替えも手伝ってあげるネ」

『それだけはかんべん・・・』


弱弱しい声で返事したら、キッチンからちぇって舌打ちが聞こえた。
えろかかし・・・!!





暫くウトウトしてたらカカシがキッチンから戻ってきた。
何故か私のエプロンを身に着けてる。
なんかおかんみたいだよ?


「はい、アーン」

『いや、自分で食べられるから・・・』


にこにこ嬉しそうなカカシに抵抗できるハズもなく、従って口をあける。
直前にカカシがふうふうしてくれたから、猫舌の私でも食べられる熱さだった。


『おいし・・・』

「そ、ヨカッタ」


おかゆって普段なら、こんなの味しないし美味しくないじゃんって思ってたけど。
弱ってるからか、丁度いい塩加減で凄く優しい味。不思議。

それになんだろ、カカシはいつも笑ってるイメージだけど、今日はやけに嬉しそう。
看病するのが好きなのかな。
カカシって変わってる。


「もういいの?あとであっため直すから食べてネ。じゃあ次これ飲んで」

カカシから湯のみを渡された。
受け取って中を覗くと、物凄いニオイと共に湯気が顔に直撃してしまった。
なにこれ・・・変な抹茶色。

カカシの顔を窺うと、笑顔のままである。
飲めと、これを。
無言で口に運んで思わずむせた。


『に・・・っが!!』

「そんなに?」


しかめっ面をした私の方を見て、カカシが笑う。
苦い、漢方薬並みに苦い。


『なにこれ、丸薬にして欲しかった・・・』

「いいから飲みなサーイ」


カカシ特製の薬らしい。
何か恐ろしいものが入ってそうでこわい。

なんとか飲み干すと湯飲みを引っ手繰られる。
苦味と渋みが口の中を駆け巡る。
あれなんか別の世界の入り口が見えてきた気がする。


「ちょ、アキノだいじょーぶ?」


虚ろな目をしていたらしくて、心配された。
なんとか頷く。カカシは心配そうに顔を覗き込んでる。
あれーカカシ、今日は口布とかしてないんだ。
かっこいい。

熱に浮かされながら呟くと、何言ってんだかと流された。
あれ、熱移った?顔赤いよ。
たいへん、カカシ今日はもう帰ったほうが

「いいからはい、これ着替え」

と渡された。
こいつはなんで私の寝巻きが入ってる場所を知っているんだ。
疑問に思ったけど、とにかく汗でべたべたする服を脱ぎたくて考えないようにする。


『・・・カカシ、ちょっとあっち向いてて欲しいんだけど』

「いや、オレの事は気にしなくていいから」


あのね、そんなキリっとした感じで言われてもね。こっちじっと見られてもね。
睨みつけると少し拗ねるようにしてキッチンへと戻っていった。よしよし。

真新しい寝巻きに袖を通すと、ひんやりしてなんだか気持ちがいい。
だるさの抜けない体を鞭打って動かして、カカシの所へ向かった。


『カカシ、今日はもう・・・』

「ちょーーっと!!なんで起きてるの!!」


物凄い速さで抱え上げられてベッドに戻された。え、なんか今お姫様だっこされた?

うわあ、夢だったのに、こんな時だなんて、うわあ、カカシ今度またやって。

「あんなんいつでもやってあげるから・・・」

はあ、と溜め息を吐いたカカシが私のおでこにそっと触った。
カカシの手、ひんやりしてて気持ちがいい。

ぼーっとした目で見上げると、カカシと目が合った。今日のカカシはいつもより3割増しくらいで優しい。なんか、嬉しいな。

風邪も引いてみるものだね。

なんて呟いたら、カカシが照れ臭そうに笑った気がした。

気が付いたら、眠りについていた。







―――――






「寝ちゃったのか」

すう、と落ち着いた呼吸で眠りについたアキノを見る。さっきよりも顔色がいい。触れてた額から手を離して、彼女の体に布団を掛けた。

風邪なんか引いたことない!って吹き飛ばすくらい、いつも元気なアキノ。
そんな彼女が昨日ふらふら歩いてたからもしやと思って今朝来て見たら案の定だった。

熱は大したことなかったけど、思わずウソをついてしまった。だって、一緒に居れる口実になるから。

「早く元気な姿見せてヨネ」

前髪を撫でて、露出させた額にそっと口付ける。起きてる時には絶対に出来ない。こんな弱ったアキノを見るのも初めてだ。

「いや、ゆっくりでもいいケド・・・」

そうしたらこうやってまた看病しにこれる、なんて考えて頬が熱くなる。
ホントに移ったカナ、でもそれでもイイヤ。

そうしたら、今度はアキノが看病にし来てくれるカモ。

なんて自分に都合のいいことばかり考えてほくそ笑んだ。ま、そんな都合よくいかないケド。



布団から少しはみ出た彼女の手を、優しく握ったら、弱々しい力で握り返される。

ベッドの横に腰を下ろして、彼女の顔を見守った。

少し苦しそうな、頬を赤くさせたかわいい寝顔に思わず顔を近付けた。


やっぱり、直接移してもらおうカナ。


ソウ考え直したのは、アキノにはナイショ。





end.

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