めいん2

□さらば、PDA
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あったかい、陽気な天気

子どもたちが楽しそうに騒いでる公園

木陰の下、ポツンと設置してあるベンチ


そこにいつも一人で座ってる


アキノはここの景色が好きらしい。













任務の帰り道、公園の近くを通った時にベンチに座った彼女が目に入って、それからずっと気になってた。

あんなとこにベンチなんかあったんだ。

はじめはソウ思った。

天気のいい日なんかポカポカしてて、確かに気持ちがよさそう。

傍にある木のおかげで眩しくないし、一度誰もいない時に座ってみたら物凄く心地がよかった。

ナルホド、これは穴場だ。

ソウ思って、誰も座ってない時はオレも座るようになった。

いつもの、本片手に。




ホントのこというと、彼女とばったり会えるんじゃないかって淡い期待もあった。

アキノとは上忍の飲み会の時にしかちゃんと話せたコトがなかった。

その時は、お互い自己紹介をしただけ。笑顔がかわいいなってそんな印象。

それから、公園で一度見かけてから、にこやかで楽しそうな様子を見て気になってしまって。

見かける度に、あ、今日もいる、なんて姿が見れたコトに喜ぶ自分がいて。

雨の日は絶対にいないカラ、そんな日はガッカリする。

一度、もし、ここで会えたら聞いてみたかった。

何がそんなに楽しいのか、いつも何見てるのか。たまに読んでる本はなんなのか。
それと、カレシはいるのか。


最後の質問が、本命だったりする。


ホントだったら、見かけた時に自分も座りに行けばいいんだろうケドさ。

それだとなんか、アヤシイ人だと思われそうで。ちょっと臆病になってしまったり。

理想は、オレが座ってたら彼女がきて、
となり、いいですか?
とか声掛けてくれて・・・

なんて、一人妄想を楽しみながら

お前駄目だなあ、なんてアスマにからかわれる日々。






(今日は、いない・・・)


休みの日、朝カーテンを開けたら快晴。

意気揚々と公園に足を運んだら、いつもいる子ども達すらまだ集まってなかった。

ちょっとしょんぼりして、早速誰も座ってないベンチに腰掛ける。

足組んでイチャパラを開く。

昨日の夜はどこまで読んだっけとペラペラ開いてしおりを探す。


と、突然強い風が吹いてきて挟めていたしおりが飛んで行ってしまった。

あ、とカオを上げたら

少し離れた場所にアキノがいた。



「あ、」

彼女はうまい事手を伸ばして、しおりをキャッチしていた。

(やばい、ほんとに来た)

心臓がどきどきウルサイ。

思わず、下を向いていると視界に彼女の足が入ってきた。


『これ、落ちましたよ』


短くお礼を言いながら受け取って、そっとカオを上げたら目が合った。

いつも遠くから、眺めてるだけだった。

今は目の前にいる。

いつも期待してたコトなのに、イザ目の前となると何もしゃべれない。

(うわあ、近くで見るとますますかわいい)

じっと見てるのも変だから、と本に視線を戻す。

と、彼女はその場を離れずに、ベンチの横まできた。

(ほんとにきたー!!)


『あの、隣、いいですか?』

「あ、ハイ。どぞー」


心臓がばくばく鳴っているのに、物凄い冷静な声で一言だけ口に出して、さっと横にずれた。

(となり!近い!!)

嬉しくて思わず、本を手にした指に力が入る。

何度この日を、妄想してきたことか。

心の中ではハイテンションで変な奇声をあげ、表では冷静に本を読み進める。

実際は、全く内容が頭に入ってこないが。



(何見てるんだろ)

横目でチラっとだけ彼女の様子を探る。

よかった、こっち側にずれて。

そんなコトを思いながら。


彼女は離れたところでいつのまにか集まってた少年たちを眺めてる。

(子どもがスキなのか)

声を掛けようか、迷う。

自分からイケ、何度も心の中で唱える。

暑くもないのに汗が出てきた、手が少し震える、組んでる足が疲れてきた。

ざわざわと風が木の葉を揺らす。

(よし、この風がやんだら・・・)

タイミングを見計らって、思い切り本を閉じた。


パタン


『本、好きなんですか?』

「あ、はい」


(ウオオオオオ、話掛けてもらえたアアアアア)

喜んでる場合ではない、折角話掛けてくれたんだから、会話を続けないと。

と思いつつ、頭には何も浮かばず続かない。


『よくここで本読んでますよね』

「あ、そうですネ」


(なんでそれしか・・・!!もっとなんかないの!!)


自分のボキャブラリーの無さに内心焦る。


『ここって穴場ですよね、私もよく来るんです』


にっこり笑った彼女の笑顔を脳内に焼き付けてたら、うっかり返事を忘れていた。

いかんいかん。

ええとええと


「すきです」

『え?』


(アアアアアアアアアアア順番飛ばしてるウウウウウウ)


パニくって失敗してしまった。

焦って立ち上がると、本を落としてしまう。

沈黙が物凄く長く感じて、思わず力を入れた拳がぶるぶると震えた。


「いや、やっぱナシ。今のナシで。ゴメン、忘れて」


慌てて本を拾って立ち去ろうとしたら、ぐ、と引っ張られて動けなくなった。

怖くて振り向けない。

固まってると、笑い声が聞こえて首だけでなんとか振り向いた。



『返事、聞いてくれないんですか?』


オレの服の裾を掴んで笑ってる。

かわいい。でも返事怖い。

言葉が出なくて困って頭を掻いていたら、本を持ってる手をぎゅと掴まれた。


『私も好きです、カカシさん』


びっくりしてまた本が落ちた。

お互いがお互いの、真っ赤な顔を見て、笑った。



それからは、公園の片隅にあるこのベンチが、二人の待ち合わせ場所。

思い出の場所になった。







END.








オマケ






「いっつも何見てたの?」


ある日なんとなく聞いてみたら指差された。

え、オレ?

はじめは弟の送り迎えに来てたらしい。

あ、あの公園の少年達か。


『それから任務帰りのカカシさんをよく見かけるようになって』


オレたち両思いだったのネ。

嬉しくて彼女の手を優しく握る。


『で、いっつもここで読んでた本ってどんなの?』


ぜ、絶対に見せられない・・・。

オレはあのシリーズを押入れの奥深くに封印するのであった。

くすん。



THE END.

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