Kafka Novel

□乾杯
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「カフカ、酔ってる?」

 私の質問に、カフカがクスッと笑った。

「お前に任せる。」

 もう一度、カフカはグラスに唇を寄せた。

「‥‥‥で、いつまで立っているんだ?」

 僅(わず)かに怒気を含んだ声で、カフカは言った。
私が何かを言うよりも早く、カフカが言葉を続ける。

「隣りに座れ。」

 有無を言わせない声の響きに、私は素直に従った。
うわぁ、アルコールの匂いがする。
カフカを見ると、頬は仄(ほの)かに紅く、碧眼(へきがん)は居座っているように見えた。
あの鋭利な刃物のような、いつもの眼光は何処へやら‥‥‥。
グラスはもう、空になっていた。

「月では、相手にならない。お前が相手になってくれるか?」

 カフカが私を見た。
通常とは異なる、カフカだった。

「いいけど、私、未成年よ。」

「別に構わない。」

 傍(かたわ)らに置いてあったグラスを、カフカは私に手渡し、それに五百ml(ミリリットル)ペットボトル内のジュースを注ぎ込んだ。

「口直し用のレモン水だ。これなら、飲めるだろう。」


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