Kafka Novel

□コモン・センス
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 カフカの碧い視線が私に突き刺さる。
その質問の回答に詰まる私がそこにいた。

「ほら、出来ない。」

 カフカがあくどい笑みを浮かべる。
私を縛っていた視線を解くと、カフカは花瓶に生けてある花々の一つの青い花を小突いた。

「この花、矢車草(やぐるまそう)には青と赤の二種類がある。青の矢車草が多いこの花瓶を見た、何も知らない人は、一本しかない赤の矢車草を『普通ではない』と言うだろう。だが逆に、赤ばかりで青が一つの場合、青が『普通ではない』と言うだろう。所詮、そんなものさ。むしろ、私から見れば、お前こそが『普通ではない』のだよ。」

 カフカが小突いた青の矢車草が左右に揺れている。

「な、何よ! 男の癖に屁理屈(ヘリクツ)ばっか言っちゃって!」

 拳(コブシ)を握り締めて、私は反発した。

「おや、いつ私が男だと言ったんだ?」

 カフカの眉が釣りあがる。

「あら、じゃあ、女の子?」

「そうとも言っていない。」

 私の発言にカフカが首を振り、鈴が鳴る。


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