Kafka Novel
□初めまして
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どうやら、『アイツ』は私以外の人からは見えないらしい。
「貴方、誰?」
私がそう『アイツ』に尋ねたのは、日が降るにつれ、花ザクラは降り逝き、葉ザクラの割合が増していく樹の下だった。
黒に近い藍色のジーパンを穿き、春物の白いコートの下に黒いハイネックを『アイツ』は着ていた。
郡青色が基調の運動靴に、金色の鈴が赤い紐の先に付いている耳飾りを左耳にしている。
濡らしたような短い黒髪で、ややつり上がった瞳は私に付き合いにくそうな先入観を与えた。
どっからどう見ても、日本の人のように思える『アイツ』だが、二つだけ、そうではない箇所があった。
一つ目は、
「カフカ。」
低くも高くもない声で『アイツ』が名乗った、この『カフカ』という名前と、もう一つは‥‥‥‥『アイツ』こと『カフカ』が黒眼ではなく、碧眼(ヘキガン)をしていたことだった。
これが、私とカフカの『初めまして』となった。
続く
※碧眼…‥青い色をした(西洋人)の瞳。
[2007/05/08/火]