連載
□序章
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12月24日クリスマス。今日で私、友野江神楽は、無事77回目の誕生日を迎える事が出来た。
今日は、私の誕生日を祝ってくれようと、子供、孫、曾孫が家へと集まってくれた。
静かだった家が、子供達の声でにぎやかになる。
私がイスに腰掛け、にぎやかな声に耳を傾けながらチラチラと雪降る窓辺を見ていると、誰かが服の袖を引っ張った。
視線を向けると、そこには今年五つになる曾孫の姿。肩まである髪を両横で束ね、淡いピンク色のリボンで結んでいる。
「どうしたんだい? 茉莉」
私は曾孫に優しく微笑みかけると、小さい掌を、そっと手にとった。
この子の名前は友野江茉莉。3人いる孫の中の末の子で、一番に私に懐いてくれている子。
「ねぇお祖母ちゃん。お話しして」
「お話し?」
私はよく、この子に桃太郎や金太郎などの昔話をしてあげていた。今回もその類いの話だと思っていたけれど、茉莉の口から出たのは、思いがけない言葉だった。
「まつり、お祖父ちゃんちゃんの昔話がききたい」
「お祖父ちゃんの?」
息子にも話した事がない夫の話し。何度も訊かれたけれど、ずっと口を紡ぎ話す事はなかった。
私が黙り込んでいると、茉莉が私の手を握って来た。何もかも見透かす様なあの人と同じ少し青みのかかった瞳が私を見据える。
「ふぅ……」
一つ溜め息を吐き、茉莉を膝に抱き上げるともう一度微笑みかけた。
「そうだねぇ。あれはお祖母ちゃんが17つの時だ……」