列伝
□相棒
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「そうね……物静かなところは茉利が似てるかしら」
隣に寄り添う様にすわる茉利の頭を、しわしわの手が優しく撫でてくれる。
「茉利……海都おじいちゃんに似てるの?」
問えば、おばあちゃんはニッコリと微笑み頷いた。
「この少し青みのかかった瞳は海都にそっくりよ。海は私にそっくりの真っ黒ね」
「ふーん……」
「なんか珍しいな。ばあちゃんがじいちゃんの話しするなんかさ」
「そう……かしら」
「ああ。なぁ茉利?」
パパが求めて来た同意に、茉利は頷く。
「……そうね。たまにはいいでしょう?」
「ま、俺はなんか儲けた気がしていいけどな」
『ご案内致します。9時15分発、ロンドン行き756便に御搭乗のお客様は――』
「お、やっとか。じゃあばあちゃん、また来るから」
「ええ。気をつけてね」
「茉利。ばあちゃんにバイバイ言いな」
茉利は立ち上がると、おばあちゃんの頬にちゅっとキスした。
「気をつけてお帰り、茉利」
「うん」
「秋都じっちゃんとか円さんにもよろしくな」
「ええ、伝えておくわ」
パパは茉利を抱っこすると、おばあちゃんに手を振りながら搭乗口をくぐる。
でも、茉利とパパを乗せ日本を飛びたった飛行機は、イギリスへと辿りつく事はなかった。
飛行中、山中へと墜落してしまったのだ――。