列伝
□相棒
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あの日は、神楽おばあちゃんの誕生日で日本に行った時だった。
おばあちゃんのいる広島には二週間くらいいて、お正月を迎えた後イギリスへと戻った。
「忘れてものはない?」
「大丈夫だってばあちゃん。ばあちゃんだってあんま体調よくねんだから、気ぃつけろよ」
国際空港のロビーでは、イギリス行きの便を待つ茉利と、おばあちゃんの孫である茉利のパパ、海(うみ)がいた。
パパは、杖をつき立つおばあちゃんを椅子に座らせながら、談笑しながら待ち時間を過ごしていた。
「アリアさんにはちゃんと連絡したのかい?」
「あぁ。早く土産買って帰ってこいってさ。余程仕事で居残ったのが残念だったらしい」
クッと喉を鳴らし笑うパパを、おばあちゃんは愛しそうに見つめた。
「お前は本当、あの人にそっくりだわ。顔も、その笑い方も」
「あの人って……海都じいちゃんの事?」
「ええ」
そう言って、おばあちゃんは目を細めた。
「まぁ、性格は貴方の方が何倍もマシだけれどね」
「マジで?」
そう言うと、二人は笑い合う。