列伝
□相棒
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「嘘、嘘、嘘! じゃあ何でここに来たの? 茉利の為なんて絶対嘘!」
声を張り上げる度に窓に刻まれるヒビ。そして最後にはパァンッ……と割れてしまい、欠片が床に飛び散った。
伯はその光景に驚くわけでもなく、じっと茉利を見つめたまま動かない。
そして哀の含んだ表情を向けた。
「……茉利が待ってたの伯じゃない」
下を向き、ポツリ……と呟いた。
「茉利が待ってるのは伯じゃないのに……傍にいて欲しいのは伯じゃないのに!」
ぎゅっとスカートの裾を掴み、絞りだすように言った。
すると伯は、一歩一歩此方に歩んでくる。
「こっ……来ないで!」
叫ぶと、風に似た衝撃が伯めがけ飛ぶ。
衝撃は伯の顔や身体に切傷をおわせた。
それでもなお伯は此方へと歩み前までくると、膝をつき茉利と視線を合わせた。
「茉利ちゃん……もういいでしょう? 貴女はもう気付いてるのでしょう。自分が……」
死んでいる事に。
伯の言葉に、瞳から溢れ、頬を伝う涙。
死んでる……。
茉利が死んでる……
茉利はコクリ……とゆっくり頷いた。