列伝
□相棒
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伯と出会って数日経ったある日の事。
茉利はいつもの様に、自室の窓から外の景色を眺めていた。
すると背後のドアが開き、伯が入って来た。
「おはようございます、茉利ちゃん」
「……おはよう」
茉利は向き直らず、窓の外に視線を向けたまま返事を返した。
「何をご覧になってるのですか?」
「お外」
「何か見えますか?」
「景色」
「そう……ですか」
質問に、何も感情を込めず淡々と返事を返した。
「……ねぇ伯」
「はい?」
「伯は茉利のパパに言われてここに来たの?」
「え?」
「それともママ? それとも……」
心の中に、何かモヤモヤとしたものが生まれる。
すると、微かに茉利の周りの空気がざわめく様に感じた。
ピシ……ピシッ……
天井と壁が軋む様な音を発する。
「茉利ちゃん。私は誰かに呼ばれた訳ではありません。私は私の意思で貴方の元へ来たのですよ」
「嘘!」
叫ぶ様に声を発すると、ピシッと窓にヒビが入った。