短編
□敵意が憧れに変わる時
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何故それを見て驚いたかって?
だってその画面のテロップに
【神宮秋都・海都兄弟】
と、デカデカと書かれていたから。
「うそ、神宮兄弟? これがあの王子と帝!?」
皿をテーブルに置くと、TVに近付いて食い入る様に画面を覗きこんだ。
「うそだぁ! だってこれって完全に……」
女じゃないか。
綺麗に施された化粧。唇にひかれた赤い紅。
誰もが見惚れるだろうその美しい姿。
それがあの神宮兄弟だなんて……。
「そう言えば円が、神宮家は大昔から続く舞妓の家系だって言ってたっけ」
その時……かな。
その綺麗な舞を見てから、僕の秋都先輩に対する見方が変わったのは……。
TVを真剣にみいっていると、ふいに電話の呼び出し音が鳴り響く。
ビクリッと肩を揺らすと、慌てる様に受話器を手にとった。
「もしもし、崎原ですが」
『あ、夜分恐れ入ります。神宮秋都と申しますが……』
受話器越しから聞こえた、少し高めのおっとりとした声。
「神宮……先輩?」
『あれ、崎原くん?』
「はい、そうですけど……」
『ああ、よかった。ごめんね、今大丈夫かな?』
「はい」
僕だと気付くと、かしこまった喋りから少し砕けた感じに変わった。