短編
□敵意が憧れに変わる時
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「そんな事ないですよ。久し振りだったからちょっと緊張してるんだ」
僕が嘘の笑顔を見せると、母さんはすぐ騙される。
高慢そうな微笑みを見せて「そうなの」と返す。
「どこか行くんですか?」
「ええ。今から撮影なの。ご飯は勝手に出前でも何でもとって食べなさい」
母さんは高そうなバッグから財布を取り出すと、その中から諭吉さんを三枚程取り出し僕に手渡した。
「わかった。いってらっしゃい、気をつけて下さいね」
ニッコリと笑顔を向けたまま母さんを送り出すと、僕は手渡された万札をビリビリと破り捨てた。
「誰がお前からもらった金で食うかクソババァ」
フンッと鼻で笑うと、鍵をかけて二階へ上がった。