短編
□敵意が憧れに変わる時
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「地位もある。勉強だって、スポーツだって、教師の信頼だってある! その僕が劣ってるって、そう言うわけ!?」
ガッと武の胸ぐらを掴むと、円が間に割り込んでくる。
「ちょっ、やめなって豊!」
その制止の声に、僕は掴んでいた胸ぐらを舌打ちと共に解放した。
「副会長なんて……誰かの下なんて……母さんが許す訳ない」
ポツリと呟く様に言うと、武が「ごめん」と謝罪してくる。
その言葉にいいよと返すと、二人と別れた。
家に帰りつくと、門の所からリビングに明かりがついているのに気付く。
母さんもう帰ってるのかな?
そう思いながら家の中へ入り、二階へ上がろうと階段を上りかけた時、リビングと廊下を繋ぐ扉が開かれ、母・真理亜が姿を現した。
どこか出掛けるのか、暑苦しそうな毛皮のコートを羽織っていた。
「豊、帰ったんなら挨拶くらいなさいよ」
その言葉にげんなりと肩を落としながら、振り返り母に頭を下げた。
「只今帰りました、真理亜さん」
「何よその態度。実の母親に久し振りにあったって言うのに嫌そうね」
嫌そう、じゃなくて嫌なんだよクソババァ。
内心毒つきながら、表向きにはニッコリと笑んだ。