短編

□敵意が憧れに変わる時
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 当時の僕は今と違って、秋都先輩の事大っ嫌いだったんだ。

 勉強も出来てスポーツ万能。しかもめちゃくちゃ美形な上に誰にでも優しくて面倒見がいい。

 そんな彼は男女問わず人気があった。

 そう、僕よりも長けてる。ただそれだけが僕にとってはうっとうしくてたまらなかった。

 しかも今回の事も含めて、益々嫌いになった。









「豊ぁ、いい加減機嫌なおせって」

「そうそう。そんなカリカリしたって現実は変わらないんだから」

「会長にはなれなかったけど、副会長にはなれたんだぜ? スゲーじゃん。一年で生徒会に入ってる奴いねーんだからよ」


 学校の帰りの道すがら。

 円、武と並んで帰路へとつく。

 その間に二人は僕を慰めようと色んな言葉をかけてくれた。

 でも、今の僕にはそれはイラつく元だった。


「僕は! 僕は会長になりたかったんだ。副会長なんて名ばかりの会長の雑用じゃないか! 僕が誰かの下で働くなんて有り得ない!」


 イラつきを露骨に言葉に表した。

 すると武がポツリもらした一言に、僕は僕の怒りは頂点に達した。


「んな事言ったって。神宮兄に勝てるわきゃねーじゃん」

「……何? 僕があんなへらへらした奴に劣ってるって、そう言うわけ?」

「いやっ、別にそう言うわけじゃ……」


 ギロリと睨みつければ、武は焦った様に両手を振って弁解する。

 
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