列伝

□二人の密会
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「お見事」


 オルゴールの音色にまじり、突然響いた拍手の音。

 私は拍手の響いた方を、半ば睨む様に見据えた。


「何してるの……伯」

「だだの通りすがりですよ」

「嘘つき」


 間を空けず言えば、白髪の男……伯はアハハと苦笑した。


「何でここにいるの? 茉利とは違う行動だって言ったでしょ」

「いえ……どうもそう言う訳には行かなくなったのですよ」

「……どう言う事?」

「それは……企業秘密。ですよ」


 私が聞き返せば、伯はにっこりと微笑んだ。

 なんか……誤魔化された気がするのは気のせいかしら。


「別にいいけど……。おばあちゃんに何かしたら許さないから」


 床に転がったオルゴールを拾い上げると、元の場所へと戻した。


「神宮海都……さんでしたっけ。貴女のお祖父様は」

「……それが何」


 素っ気なく言葉を返すと、伯からもれた一つのため息。


「……茉利。貴女が何を考えて今この状況を黙視しているのかは私には分かりかねます。ですが、安易な行動をしてもらっては困るのです。わかりますね?」

「わかってるもん、それくらい」

「では何故……」

「わかってる! でもっ、でも! これがおばあちゃんの願いなの。望みなの!! 伯がなんて言おうと茉利の事邪魔させない! もし邪魔するならいくら伯でも……っ」


 ギッと私の何倍も背のある伯を見上げ睨みつけた。


「……わかりました。暫くは貴女の思う通りになさい。ですがいつまでもワガママは通らない。時間がないのですから」

「…………」


 その言葉を残し、伯はまるで煙の様に私の前から消えた。

 一人店内に残った私は、唇を噛み締めうつ向く。


 おばあちゃん、茉利はどうすればいいの……?


 
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