列伝
□二人の密会
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「ほなら姫さん。昼過ぎには帰るさかい、ええ子に店番しとってや」
「うん、いってらっしゃいすぅ」
いつもの様に鈴の音に来ていた私。
今日はすぅがオルゴールの部品をとりに行くらしく、お留守番を頼まれた。
すぅを見送った後、私はすぅが用意してくれていた朝食を食べる。
すると、ガランガランとベルの音をたてドアが開いた。
お客さんかな?
入口に目をやると、そこには一人の男の人が立っていた。
「…………」
その男の人は黙ったまま私の方へと歩んでくる。そして目の前に立つと、上から私を見下ろしてきた。
「……どうしたの?」
問い掛けるけれど、男の人は黙ったまま私を見つめる。
「お家がわからないの?」
もう一度問い掛けると、男の人の頬を伝う滴。
「……待ってて」
椅子からぴょんっと下りると、棚に飾られたオルゴールを手にとった。
これはおじいちゃんが作ったオルゴール。
私はそのオルゴールのフタを開くと、男の人へと手渡した。
綺麗な音色が店内に響く。
すると、男の人がすぅ……って薄くなって消えた。
男の人に渡したオルゴールは、姿が消えたと同じに床へと音をたて転がった。