列伝

□堕天使のオルゴール
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 そんな私の耳に届いた、一つの怒鳴り声。

『父さんも母さんももういい加減にして! 帰ってくれば喧嘩、顔をあわせれば怒鳴りあって!』

 この声は私。悲痛な、訴え。


『今日は私の誕生日なんだよ? なのに何でそんな日くらい仲良くしてくれないのっ?』


 両親も何か言っている様だけれど、何故か、私には自分の声だけしか耳に届かなかった。


『もういい! 父さんも母さんも大嫌いッ! 二人とも死んじゃえっっ』


 そう聴こえた後、リビングから飛び出してくる私の姿。その顔は涙で濡れていた。


「っ?」


 もう一人の私は、私の身体を通り抜けて行って、玄関から外へと出た。


「まッ、待って!」


 私も後を追い、外へと出る。すると、丁度門の前に、立ち尽くした私がいた。その顔はある一方へ、驚愕の表情を向けていた。

 私が自分に手を伸ばした瞬間、突然何か大きな物が自分の身体事前を通り過ぎていった。

 大きな、急ブレーキの音と共に。


「う……そ……」


 私の身体を持っていったのは、大きなトラックだった。急ブレーキをかけた反動で車体が持ちあがったのか、反転してアスファルトの上に転がっていた。

 そして、それから数十メートル先に、まるで玩具の人形の様に、道端に寝そべった私の身体が……。

 そうか……そうだったんだ。

 私、あの日……。

 視界が真っ白な光に覆われ、その眩しさに、私は目を閉じた。

 次に目を開いた時、私はまたあの店に戻っていた。目の前には相変わらず無愛想な少年と、今にも泣き出しそうな青年がいた。


「思い……出したか?」


 私は涙でぐしゃぐしゃになった顔で、こくりと小さく頷いた。


 
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