列伝

□堕天使のオルゴール
3ページ/7ページ


「ここは、貴方の様な迷える者が来るお店なんですよ。救いを求めて……」

「どういう意味ですか?」


 視線を青年に移す。映った彼の表情には哀。


「それは……」


 何かを言いかけたけど、青年は口を噤み、頭を垂れてしまう。理由を私に伝えるのを躊躇っているみたいだ。

 黙り、青年を見つめたままでいると、突然、店に飾られた全てのオルゴールが音色を奏で出す。驚き、辺りを見渡しているとふっと少年の掌が私の視界を覆う。


「なっ、何……」

「真実を思い出さない限り、お前は救われない。自分自身でその真実を見てくるんだ」

「真実って何っ?」


 キーンと耳鳴りがし、意識が遠のく。完全に意識がなくなる直前に、掠れ気味に聴こえた、少年の声。


「思い……した……う一度ここへこい。そうしたら示してやる。お前がこれから進む……道を……」


 それを聴いた後、私は暗い闇へと意識を手放した。

 意識を手放す直前。何故だろう。

 何故か両親の声が聞こえた気がした……。

 
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ