列伝

□堕天使のオルゴール
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「それとも、テメェの目には視力ってもんがないのか? ぁあ?」

「ご、ごめんなさい。そう言うつもりで言ったわけじゃ……」


 半分固まったまま謝罪すると、少年はそのまま私の横を通り過ぎ、唯一陽の光が差す窓辺に腰を下ろした。


「で?」

「え?」

「今日は何の様だ?」


 窓辺に一輪だけ飾られた花をいじりながら、視線を向けず、問いかけてくる。


「俺に訊きたい事があってきたんだろ?」

「あ、うん。昨日もらったオルゴールの……」

「オルゴール?」


 私は背負っていたバッグの中から、小さな箱を取り出す。それは昨日、彼から半場無理やりもらったオルゴール。

「このオルゴールの曲名、何だろうって気になって……」

「……」


 底のゼンマイをまわし、フタを開く。すると、静かに流れ出す音色。


「いい曲ですよね、これ。静かで優しくて、でも時々……」


 何かを訴えるかのように鳴り響いて……。


「……真実」


 オルゴールの音色に聴き入っていると、少年がぽつりと呟く。

 視線を彼に向ける。


「曲名、【真実】って言うんだ」

「真実?」


 少年は立ち上がり、私の前まで来ると、じっと見据えてくる。


「今、お前が一番に欲しがっているものだ」


 私が一番に欲しがっているもの?

 何、言ってるのこの人?


「何でこの店が、こんな人目につかない様な路地裏にあるか解るか?」


 私は少年から目を逸らさず、小さく首を左右に振った。


「見えないんだ、実際。普通の人間には」

「見え……ない?」


 少年の言葉に眉を寄せ、聞き返す。

 だって見えないって、私には普通に見えてるじゃない。


「ここは……」


 すると、今まで黙っていたあの綺麗な青年が、付け足すように会話に入ってきた。

 
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