けいおん!SS

□かみなりのうた
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雨は激しさを増し、しまいには雷まで鳴り始めた。
大きい音やびっくりすること、怖いことが大の苦手の私は、雷が鳴るたびにびくり、と身をすくませては、視界が涙でにじんだ。


それでも帰ろう、とは言わない。
この子を一人ぼっちにさせたくないから。
そう思って、しっかりと律の手を握った。

何度目の雷だろうか、近くに落ちたと思ったら、


かたかた


何か小刻みに揺れる気配になんだろうと傍らをみると、揺れの原因は思いのほか、近くに見つかった。

律だ。

もしかして。
え、うそ、まさか。

「律…もしかしてお前、雷怖いのか?」
「うぇ!?」

びくっと小動物かのように身を震わせた律はそれでも気丈に胸を張って見せた。

「そ、そんなわけないだろ! そんなこと言って、澪の方が怖がりじゃないか。
お化けも暗いところもだめなくせにー」

精一杯、私をからかうことで、
怖いんだから無理するなとかばうことで、
怖い自分を隠そうとしている律に、私は気づいてしまった。


「それに、私がここに残りたいって言ったんだから、
私が怖がってちゃだめだろ!」


それじゃぁ怖いって言ってるようなものだ。
ぎゅっと手を握ってあげること以外に私にできることはないだろうか、そう思ったら、自然と歌が口をついた。

「かえるのうたがーきこえてくるよー」
「ぶはっ」

歌い始めた途端に吹き出した律をじろり、と見ると、
目の端に涙を浮かべて笑っている律と目が合った。

「失礼だぞ」
「ごめんごめん」

少しも悪びれない様子に少しむくれてすぐに笑って。

「一緒に歌おうか」

どちらともなくそう言うと、2人で歌うかえるのうたが雨を伝って曇天に溶けていくかのようだった


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