negima SS

□starting point
2ページ/5ページ

「うー……だんだん寒くなってきたね」

初等部までの道を歩きながら首をすくめた。

「そうだね」

ぽつり、こぼす君の声が優しく耳を打つ。

「水泳もオフシーズンになってきちゃったね」
「そうだね、温水プールだから冬でも大丈夫だけど、なんだか寂しいかな」
「そっか。あ、見えてきたよ」

初等部の門が見えてきた。懐かしいね、なんて感想をこぼした後にどこに行くのかと尋ねたら
「ついてきて」
真剣な口調で歩きだしたものだから、慌てて後を追った。




着いた先は、
「……プール?」
「うん」

屋外に設置されたプールは柵に囲まれていて、入ることができない。
アキラと言えば確かにプールだけど、と思って無言で横顔を見ると、アキラが口を開いた。

「ここは、私の原点だから。なんとなく、来たくなったんだ」

じっとプールを見つめるアキラをしばらく見て、
「入らないの?」
そう聞くと、
「や、閉まってるし……」
まじめな回答が返ってきたので、にかっと笑う。

「そんなの」
がしゃり、柵に手をやって、
「飛び越えればいい」
一気にジャンプして向こう側へと着地した。

「ちょっと、裕奈!?」
「気づかれなければだいじょーぶだよ」

私はへへん、と笑うとプールへと目を転じた。
初等部の時のアキラがそこに見えるような気がして、ふっと笑みをこぼすと、頭に軽く衝撃があった。

「こら、裕奈」
「えへへ」

いつの間にか隣までやって来てたアキラにはたかれたみたいだ。

「アキラだって柵超えてるじゃん」
「あ」

あまりにも間抜けな声に私が吹き出すと君もつられて笑った。


_
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ