Strike Witches SS
□Alternative
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いつもと様子が違うことにはすでに気づいていたけど、今日のトゥルーデの飲みっぷりは半端なかった。
そんなに強いわけでもないのに、黒ビールをのどごしだけ味わうような勢いで流し込んでいる。
ついに電池が切れたように机に突っ伏してしまったのを見て、私は頬杖をついていた手をはずし、口を開いた。
「飲み過ぎだよ、トゥルーデ」
「……」
返答がない。
……まずいか?
寝てしまっているなら寝てしまっているでベッドに入らせなくては。
そう思って椅子を立ってトゥルーデの肩を叩いた、その時だった。
「……っ!?」
突然視界が回転した。
気づくと私はベッドの上に横になっていた。
落ちてくるグレイがかかった黒に気づいて、自分の上にいる人物を見る。
独特の垂れ耳と、しっぽ、そして魔力を帯びている体を見て、トゥルーデが魔力を使ったことがすぐにわかった。
トゥルーデは救いを求めるような目をしていて、それに私は心を締め付けられる。
それでも、言わなくてはいけない。
ふっ、とため息をつくと努めて笑顔を作った。
「何してるんですか、ゲルトルートさん」
「……っ」
私の言葉に、トゥルーデは我に返ったような目をした後、
「すま、な、い……」
瞳が揺らいで、そのままベッドに倒れた。
「しょうがないな……」
私はそう呟くと、そこにあった毛布をトゥルーデに乱暴にかけ、ベッドの傍らにあった椅子に腰掛けた。
すー、すー、少し苦しそうに寝息をたてる横顔を見つめて、思う。
−妹の代わり、のつもりなんだろうか−
ちらり、と今は伏せられた写真に目をやった。
トゥルーデの妹、クリスが怪我を負ってから1週間と経っていない。
−早く良くなって欲しい。
そうすれば、妹の身代わりではなく、私を見てくれるかもしれないから。
だからそれまでは……−
「身代わりでも、いいよ」
大好き、と愛しい人の耳元に囁いた。
(fin.)