けいおん!SS
□ある夏の日に
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小さいときの話。
律はみんなのヒーローだった。
女の子にも男の子にも好かれ、周りにはいつも人がたくさんいた。
なのに、律はことあるごとに私に絡んできた。いつもひとりぼっちだった私なんかに。
目立つことが嫌な私は、そんなヒーローのいたずらが嫌だった。
『ある夏の日に』
その日もヒーローは気まぐれを起こしたかのように私の家までやってきた。
「澪ちゃーん! おいしいスイカが家にあるんだ、食べに来ない?」
「い、いいよ別に……」
家の扉から半分身を出してそう答え断ろうとする私を、母はにっこり笑顔で家から押し出した。
思えば母にとってはずっと家の中にいる私に外へ連れだしてくれる友達が現れて安心したのかもしれなかった。
でも、その時の私は母に見捨てられたのだと思って、律に手を引かれて行く家までの道はずっとアスファルトに目を落としていた。
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