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□Runner
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僕はランナー、
走るのが僕の生き甲斐。
はしる、
走る、
ハシル、
ふと駆け抜けてきた道を振り返ったら足が止まってしまった。

何もない、
何も。

だけど僕はランナー、
走るのが生業。
すすむ、
進む、
ススもうとしたんだけど、
足が動かないんだ。

僕はランナー、
走るのが定め。
なのに走れなくなったらどうすればいい?

動け、動けったら。
何が足りないんだ言ってみろ、
体力か
気力か
情熱か?

だめだ、なんでだ、動き出したいのに、この一歩が出ないんだ。
今動かなくていつ動く。

不意に聞こえた声に振り返ると、道の脇に小さな女の子が立っていた。
がんばれ、
舌足らずな口が奏でた声に、急に世界が広がった。

走ってきた道には何もない?
嘘だ。
こんなにたくさんの人がいたのに。
目の前にいるたくさんの人に視界がにじんだ。

再度問おう。
何が足りないんだ言ってみろ?
足りないなんて、嘘だ。
体力も気力も情熱もあった。
気づかなかっただけだ、この声援と、僕が確かに刻んできた足跡に。

腹から沸き上がるこの気持ちを勇気と人は呼ぶのだろう。
さぁ、進もう、僕は一人じゃない。

足りないものは何だ?
そんなもの、ないさ。


(fin.)
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