negima SS
□そして、希望の黒
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「すいません、こんなこと言ってしまって…でも、たまに苦しいんです」
そう言って私はうつむいた
「…せっちゃん、泣きたいん?」
「…え?」
驚いて顔を上げる
「そういう顔、しとるから…」
「そんなことは…」
「肩の力、抜いて?
泣きたいときは泣かなあかんよ?」
「…。でも…」
私は目線をさまよわせ、周りをうかがう
「まわりなんて気にせんと
苦しいときこそ、声上げて泣いたらええ
せっちゃんはいつも気を張りすぎなんよ」
そういって抱き寄せてくれたお嬢さまの温もりは優しくて…
ぽろり
こぼれた涙は止めどなく、しかし静かに流れる
「す、すいませ…」
あわてて拭おうとする私の手を遮って、
お嬢さまは私の頭に優しく手を添えさらに抱きしめた
視界を覆う、暖かな黒…
お嬢さまの髪の色…
ただただ泣くことしかできなくて声も出さずに泣いた
−ここにいて、いいですか?
笑っても、いいですか?−
私の思いに応えるかのようにぽん、ぽん、と私の頭をお嬢さまがたたく
声はでなくとも…
響きわたる自分の声を感じる…
−ずっと苦しかった
泣いちゃだめだ
我慢しなきゃだめだ
そう言い聞かせて生きてきて…
でも今、
私を包み込む暖かな黒は私に泣いていい場所を与えてくれた
いつか、心の底から笑えるであろう場所を…
きっとあのころ一人で描いた夢は目の前に…
(fin.)