negima SS

□花冷
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「くっ、あっはは」
「むー、何がおかしいの、せっちゃん」
ぷう、と頬を膨らますとますます子供のようで。
「い、いえ、すいません…ぷっくっ」
謝るつもりだったのに、あなたの行動が笑いを加速させる。
あまりにも子供らしい行動、そして変わらぬ愛くるしさに思わず
笑ってしまったと言ったらあなたは怒るだろうか。
「もーせっちゃんってば」
つられて笑い出したお嬢様を見て、「ああ、これでいいんだ」なんて
素直な気持ちが湧き出てきた。

私は、あなたのことが好きで。
あなたもきっと……少なくとも私のことを嫌いではないはずだ。
そして、だからこそ、あなたの「隣」に立って、一緒に歩いていけばいいのだ、と。
気負うことはない、これでいいのだ、と、単純だけど、
自分の生きる意味を見出した気がして、心が軽くなった。


「せっちゃん、そういう風にいつも笑ってくれればええのに」
「努力します」
「努力なんてせんでええよ、せっちゃんらしく、な。
桜が花冷えの日々を超えて自然と咲くように……きっと自然と
ほころんでいくものやと思うんや、だから、な」

― ずっと一緒におって、いつかその笑顔を見せてな ―

小さく耳に囁かれた言葉に、私の頬は桜に負けないくらい、ピンク色に
なっただろう。

春は、きっと近くに。


(fin.)

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