negima SS

□花冷
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「せっちゃん、一緒に帰ろ」
いつものように声をかけてくださるお嬢様。
「はい」

こんな自然なやり取り、1年前の私は想像できただろうか。

幸せ。

エヴァさんの言葉によって気づかされたこと、でも確かにその言葉が
今の私にあっている、と感じるのだ。

「ちょっとな、寄りたいところがあるんよ」
「いいですよ」
彼女の行くところにはどこにでも着いていく。
だからこそ、私は二つ返事でお嬢様の提案を受けた。

こっち、とお嬢様がつれてきてくれたのは、校庭の端にひっそりと立つ
桜の木だった。

「あ、咲いとる!」
「本当ですね」
隣に立って桜の木を見上げると、蕾の中に桜の花が慎ましやかに
咲いているのが見えた。
飽くことなく桜を見上げているお嬢様の横顔を盗み見ると、
そういえばこの立ち位置も随分変わったものだ、と思った。
これまでは、ずっと後姿ばかり追いかけて、隣に立つことなど
叶わないと思っていたから。

こんな些細なことに幸せを感じていると、隣のお嬢様の気配が急に動いた。

「…よっ、ほっ」

ぱしん、ぱしん、と小気味良く響く掌の音に何事かと見てみれば、
お嬢様が拍子を取っていた。

「な、何をやってらっしゃるのですか」
「や、なに、桜の花びらをノーバンで取れんもんかな、なんてな」

茶目っ気たっぷりに微笑んだお嬢様についに我慢ができなくなって
吹き出してしまった。

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