短編

□Lolita
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まるでそれはシフォンケーキのような柔らかさとマカロンのような甘さをもって舌先で蕩けて弾ける甘い甘い夢現。それを纏って笑う少女はきっと愛狂しい。白い華やかなフリルに細やかな気遣いから生み出されたレース、サテンの滑らかなリボン、細工はボタンの一つにまで施されている。

「で…何でオレがこんなのを着なきゃならねぇんだよ…?」
「いいじゃないか、似合ってるぜ。オレ様の次くらいにな」

目の前の鏡に映るのはそれを身に纏わされたオレ自身。しかもご丁寧にも髪と同じ金髪のウィッグで模造されたツインテール付きだ。何を隠そう美容室という職業の職権を乱用したアレンのせいである。ちなみにアレンも自らの髪色と同じ赤いロングヘアのウィッグを付けていた。むぅと不機嫌に彼を見れば鏡越しに首を傾げ、妖艶な微笑を向けられる。さらりと肩から落ちた髪の一束。思わずドキリと跳ねた自分の心臓が恨めしくなった。

「ほら、こっち向け。最後の仕上げがまだ済んでないんだからな」
「はぁ…仕上げって何なんだよ。もう十分じゃねぇか」
「オレ様は完璧主義なんだ。化粧までしないと気が済まない」

男に化粧など、と開きかけた口をつぐんだ。そもそも男がこんな服着れるか、と言ったのにも関わらずこの状況なのだから。いまさら何を言っても無駄なのだろう。オレは大人しくアレンの方を向き、そっと瞼を閉じた。
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