短編

□Temptation
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臨時休業、仕事熱心な男の店に掛けられたその看板。オレの頭には昨夜の出来事が思い浮かび、額には汗が滲んだ。これは決して熱いからだとかではない。昨夜の自分の行動に彼が今日店を休んだ理由として思い当たるものがあったからだ。

「やべぇ…よなぁ…」

きっかけはそう、今思えば理不尽過ぎるオレの嫉妬だった。仏頂面の自分とは正反対に誰にでも微笑んでみせるアレン。募る不安が行動に出てしまうまでにそう時間はかからなかった。誰にでもいい顔して誰にでも身体を開いているんじゃないか、なんて問い詰めて両腕を縛って。その後はもう無我夢中だった。

『ぅあっあ…も、無理…だっニー…あっああ…手、外…せっ』
『ばか…外さねぇよ…っ』
『あああっ…んっん、ふ…ぁあっ頼…むから、あっ外…っ』

何度も手を縛る布を外せと懇願するアレンの言葉に一切耳を傾けることなく彼が気を失うまで抱き続けて…。

「謝る、べき…だよな…けど…どんな顔して会いに行けばいいんだよ…」

疲労からか、もはやぴくりとも動かなくなったアレンの身体を清めてベッドに寝かせると逃げるようにアレンの家を出たのがまだ日が登る前だったか。それから一睡すら出来るわけもなくオレは一晩を明かしたわけだ。
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