Honey*Rabbit
□トライフル
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視点:入江一葉
わたしはアナウンスで呼ばれた為、ラケットを持ち、1番コートに入った。
ストレッチで大部筋肉を解しておいたので調子は良さそうだ。
『よしっ……』
その場で軽く飛び跳ね、息を吐いた。
「……もしかして、相手って君?」
わたしが両手を上げて伸びをしていると、反対側のコートから男の人の声がした。
深緑色の髪、四角いフレームの黒縁眼鏡の奥には切れ長の目。
その男の人はわたしを驚いたような表情で見つめた。
『あの……?』
「高2の矢野、2番」
短く言われた為、自己紹介だと気付くのに数秒かかった。
『わたしは入江一葉、高1で1番コートです』
わたしはペコリをお辞儀をした。
"これより1番コート入江一葉VS2番コート矢野琉斗の入れ替え戦を行います。両者、コートの位置に着いて下さい"
黒部さんのアナウンスが入り、わたし達は指示に従った。
ちらっと周りを見てみると、そこには徳川さんや修さん達一番コートの人達や、他のコートの人達何人かががこちらを見ているのが見えた。
『あっ……修さん』
ぼーっと見ていると修さんと目が合った。
彼もやはり気付いたみたいで笑顔わたしに手を振ってくれた。
わたしは小さく手を振り返し、ぎゅっと愛用のラケットを握り、矢野さんの方へ向き直った。
『さぁ、試合を始めましょうか』
―"ザ ベスト オブ 1セットマッチ 入江サービスプレイ"
わたしはボールを数回地面に打ち付け、トスを高く上げた。