Honey*Rabbit
□兄の作戦
1ページ/3ページ
視点:入江一葉
部屋のドアを閉め、100号室に向かおうと踵をかえすと、直ぐそこには壁に寄りかかっている兄さんが居た。
兄さんはわたしに気づいたのか、微笑みながら向き直った。
(もしかして……)
『待っててくれたの……?』
「うん、話はどうなったの?」
『練習は明日からで、1番コートの人達と一緒に行動するらしい』
わたしがそう伝えると、兄さんは少し考える仕草をした。
「1番コート……それじゃ徳川の所ね」
兄さんは小さく呟いた。
「そうだ、一葉、102号室においで。一葉の荷物も一旦そこに置いておいたから取りに行くついでにね」
(102号室ってことは兄さん達が使ってる部屋かな?)
『わたしは別に良いけど、兄さんは練習良いの?』
窓からテニスコートを見てみると、沢山の高校生が同じデザインのジャージを着て練習に励んでいるのが分かる。
「大丈夫だよ。それに駄目だったら一葉を迎えに行く許可も出なかったよ?」
『うーん……それじゃ、お邪魔させていただこうかな』
今度はわたしから、兄さんの手に自分の手を重ね、指を絡めた。
「ふふっ、どうぞ」
兄さんはそのままわたしの手を引いた。