Honey*Rabbit
□人生初の言葉
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視点:入江一葉
『ど、どどどどどうしよう……っ』
センターコートに一人残されたわたしは、未だに真っ赤であろう頬に両手をあてて身悶えていた。
(これじゃ外に涼みにきた意味が……それに、こ、告白なんて生まれて初めてされたから、その……)
さっきの徳川さんの表情と声が頭の中を駆け巡る。
"好き"、そんな風に異性から言われたのは兄さん以外初めてかもしれない。
でも兄さんの言った好きはそういう意味じゃなくて、きっと家族愛で……だから徳川さんに言われた好きは初めてで……
わたしの頭の中はもうパニック状態だった。
*****
それから数分位経ったのかもしれない。
『好き…かぁ……』
まだ内心驚きつつも、少しずつ平常心を取り戻しつつあった。
「こんな所にずっといたんじゃ風邪ひいちゃうよ?」
突然の優しい声音と共に、ふわっと何かが肩にかけられた。
それが兄さんのカーディガンだと直ぐに分かった。
『に……いさん、あ、あの……』
わたしは今どんな表情で兄さんを見ているのだろうか。
いつの間にかここにいた兄さんは優しく目を細めると、わたしの髪を優しく撫でた。
「部屋に戻ろう?」
わたしはぎこちないながらも小さく頷いた。
人生初の言葉
返事は……もう少し考えさせて下さい。
(どうして兄さんはここに……?)
(一葉の部屋ノックしたけどいなかったからさ。ちょと探したらここにいたんだよ)
(そっか……)
((これじゃまだ、気持ちに気付いてないかもね))
(部屋に戻ったらはちみつ入りのホットミルク飲もうか?)
(うん……ありがとう、兄さん)
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