Honey*Rabbit
□好きは紛らわしい
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視点:入江一葉
昨日大和さんに教えてもらったので迷わずレストランに着くことが出来たわたしは、夕食の時と同じくあの三人の元へ向かった。
もちろん朝食の乗ったトレイを忘れずに。
*****
「おはよ、一葉。今日はちゃんとここに来れたんだね」
『おはよう。だってレストランに二回目だし、覚えたもん』
"ここの席座っていいですか?"と一つの空席を見て鬼さんと徳川さんに尋ねると、お互いから了承を得たのでわたしは席に着いた。
『いただきます』
目の前で手を合わせ、挨拶をし、トーストしてあるフランスパンにマーマレードを塗り、小さく齧った。
(昨日も思ったけど、ここの料理はすごく美味しい……!)
きっとこのパンも、普段食べてるものと風味も食感も違うから手作りなのかも。
『あ、徳川さんって左利きだったんですね』
パンを頬張りながらちらっと周りを見ていたら、左で箸を持ち、オカズ食べている徳川さんの姿があった。
昨日はその……徳川さんのデザート見ちゃってたからそのことに気づかなかっただけなんだけどね。
「あぁ」
徳川さんはそれだけ答えるともくもくと食べ続ける。
あ、その煮物も美味しそう。
「相変わらず素っ気無いなぁ、徳川は」
「いつものことだ」
「そんなことしてると嫌われちゃうかもよ?」
からかうように兄さんは言った。
『え?わたし、徳川さんの事好きですよ?』
「「はぁ!?」」
わたしがそう言うと三人が驚いた顔をして一斉にこっちを見た。
『そ…そんなに驚くことですか?だって徳川さんは優しいし、良い人じゃないですか』
「……ああ、そっちの好きね」
兄さんは普段通り落ち着きを取り戻したようで微笑んでいた。
さっきまでの焦りはなんだったんだろう?
「昨日会ったばかりなのにか?」
鬼さんは不思議そうに聞いてくる。
『昨夜一緒に部屋でお話したんです』
食事を終えた鬼さんは"なるほどな"と納得したような口調で告げると、席を立ってこの場から去って行った。
「僕が徳川に頼みごとをした後に、ね。一葉、徳川に何かされなかった?」
『へ?』
「入江さん……」
「ふふっ、ほんの冗談だからそんなに睨まないでよ。じゃあ僕は練習に行ってくるね」
そう言うと兄さんはわたしの髪を撫で、席を立ち、食器の乗ったトレイを持って去って行った。
この場に残されたのはわたしと徳川さんだけ。