第一幕

□13.リーマス・ルーピン(後編)
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ダンブルドアの髭は取られることがないまま、次の満月の晩がやってきた。


(ジェームズ達は行ったのかな……?)


部屋の窓から見える月を見ながら、エメリーは考えた。

ジェームズに力を貸してほしいと言われたとき、嬉しかった。

気持ち悪がられていた能力で誰かの手助けができる日が来るとは思わなかった。


それに、“リーマスは人狼かもしれない”というジェームズ達の予想も、気になって仕方がない原因の1つだ。

もし本当なら、話したいことがたくさんある。



「エメリー、どこに行くの」

『と、トイレに……』



そっと部屋を抜け出したエメリーは、談話室でリリーに捕まった。



「私、嘘は嫌いよ」

『リリー、あのね、ジェームズ達がまた外に行ってるかもしれなくて――』

「先生に言いに行くのね?それなら私も一緒に行くわ」

『ええと……』

「エメリー、バレンタインにしたダンブルドアの話を覚えてる?」



言いよどんでいるところに突然バレンタインの話をされ、エメリーは混乱した。

てっきり追求されるものだとばかり思っていた。


(もしかして時間稼ぎ?)


リリーはジェームズ達が出て行くのを既に見たあとなのかもしれない。

先生に報告も終えていて、戻ってくるまでエメリーを引きとめておく作戦なのかもしれない。

それならあまり話を続けないほうがよさそうだと思ったが、リリーは真剣だった。



「話してくれるまで待つんじゃなかったの?あなたは今、無理やり髭を取ろうとしているあの人達の手伝いをしようとしているのよ」

『ダンブルドアのところには行かないよ』

「例え話よ」



リリーは腰に手を当てて考え込んだ。

それから無人の談話室をぐるりと見て、小声でぶつぶつと文句を言い始める。

「馬鹿げている」「あんなの脅しと同じだ」というような言葉が聞こえた。



『ダンブルドアの髭とリーマスが何か関係あるの?』



質問してからしまったと思った。

リーマスのことは内緒にするよう言われていたのだ。

エメリーは内心ひやひやしたが、リリーが大きな反応を見せることはなかった。



「だからくだらない作り話だったのよ。反応を見たかっただけなのか自白を促していたのか知らないけど、ルーピンは秘密を暴くことに反対していたでしょう?それが答えよ」

『うん……』



そうかこれはリーマスの秘密なのか。

そしてジェームズ達はその真相を知りたがっている。

そういうことなら教えてくれるまで待ったほうがいいのではないかという気になってきた。



「さ、マクゴナガル先生のところに知らせに行きましょう」



リリーは笑顔になり、エメリーの手をとった。

しかしエメリーは談話室を出たところで立ち止まった。



「どうしたの?」



動こうとしないエメリーを見て、リリーの眉間に徐々に皺がよっていく。

寝ていたところを起こされて不機嫌な太った婦人からの視線も痛い。
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